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2016.1.3/エッセイ
私の,Pioneer BDP-LX91 の映画ライフ

私は,映画の浪費家である.とにかく気になる映画を次々と観ていく.そして気に入った映画は何度でも観る.好きなジャンルは特にないが,歴史ドラマは苦手である.これは学生時代に,歴史勉強に手を抜いていたしっぺ返しであろう.

さて,そんな映画浪費家の私にとって,映画館で映画を見るというのは,経済的にも,「数的」にも無理である.だからもっぱら市販タイトルを手に入れ,自宅で,プロジェクターで投影して観ている.若いころからAV機器には興味があって,画質・音質には敏感で,どうしても高価な機器に目が行く.この点,最近のデジタル機器は型落ちすると一気に価格が下がるので,中古市場で過去のフラッグシップ機を手に入れることにしている.現在は,プロジェクターにビクターのDLA-HD750を投入し,BDプレイヤーにはPioneerのBDP-LX91をそろえて,一応の満足が得られている.これらは定価で購入すると両方で100万円を超えるが,20万円余りでそろえることができた.BDプレイヤーのほうは一度ドライブ交換をしたが,現在,快調に動いている.

ところで,私が映画タイトルの収集を始めたのはいまから15年以上も前からで,そのころはまだレーザーディスク(LD)のタイトルが販売されていて,DVDも出始めたころであった.DVDのタイトルが多く出るにつれLDの中古価格が下がり始め,かつて欲しかったタイトルが,500円とか300円,時には量り売り状態で手に入るようになり,いわゆる「爆買い」した.フランス映画などの希少タイトルも安価で手に入るようになって,イザベル・アジャーニなど気に入った女優のタイトルもLDで買い集めて,毎晩のように鑑賞した.そのころは,PioneerのHLD-X9をSANYOのLP-Z3につないで観ていた.もちろんいずれも中古品である.そうこうしているうちに,LDタイトルは800枚に届かんとするまで数が増えた.

そのうち時代は進み,地上テレビ放送もデジタル・ハイビジョン化し,映画メディアもDVDからBDへと移り変わっていた.もちろん私はこの間に,LDからDVDへの買い替えも含めてDVDビデオも500タイトルほど手に入れていた.そして今またBDタイトルへの買い替え,...と息切れがしそうな感じを抱きながら,画質にこだわり,お金を費やしていた.なにしろ,BD映画タイトルの24pソースと24p再生プロジェクターが,それまでと格段に違う表現力を呈するのだ.パンしている画面を見ていると本当に動きがスムーズで,ちらちらしていた今までの映像は明らかに24p−60iの2-3プルダウン変換をそのまま60iで観ていたせいなのだということを思い知らされ,これが本物の映画だと妙に納得したことを覚えている.

そんな時に,BDレコーダーではなく,高品質のBD再生専用プレイヤーが欲しくなり,ネットで調べてみたが,これが意外に販売されていなかったのだ.唯一といっていいのが,最初に紹介したPioneerのBDP-LX91であった.LX91で注目すべきは,デジタルテレビ放送を録画したBD(1080/60i)や,NTSCのDVDビデオ(480/60i)の2-3プルダウンで記録されたデータを逆変換して,24pにして再生できるという記事であった.つまり衛星放送の映画タイトルを録画して,LX91で鑑賞すれば,24pの映画,つまり市販のBDビデオと同じになるということだ.白須氏のブログには「空からBDが降ってくる」とまで書かれていた.映画浪費家の私はこの記事で決断した.LX91を購入し,WOWOWなど有料放送に加入し,映画を浪費しようと....そしてその後,録画タイトルは,LDやDVDのバージョンアップも含めて1000を超え,まさに最高のコストパフォーマンスで,映画を楽しんでいる.もちろん,24p変換の恩恵で,録画タイトルが市販のBDタイトルに劣らずきれいであることは言うまでもない.

さて,前置きが非常に長くなったが,ここからが本当に書きたいことなのである.このLX91に,当初考えていなかった恩恵が眠っていたのだ.

まずは,よく言われているDVDビデオの復権である.DVDの市販ビデオタイトルをLX91で再生すると,60iが24p変換され,本当にきれいなのだ.480/24pの映像にこれほどまでの解像感や動きの滑らかさがあることは,60iのインターレースで見ていた時にはわからなかった.確かに遠景をロングでとらえたディティールは1080pの解像力に到底及ばないが,映画の多くは人物を顔のクローズアップやバストショット,ウエストショットでとらえていて,しかも見ている私は,人の表情か字幕に視線が行っていることが多い.つまり,画面に大きく映し出された,人物の映像が多いタイトルは,480pでも十分映画に入り込めるのだ.DVDビデオタイトルも現在値崩れが始まっていて,700円台で新品が手に入るものがあるし,中古では価格崩壊しているものも多い.SF映画のように「絵」を楽しむなら別だが,ドラマ作品であればDVDでもよいのではないかと思い始めている.

次は放送TVドラマのリマスター版である.TVドラマは,ビデオカメラで撮影された60iの作品が多いのではないかと思っていたのだが,少し古いTVドラマは,フィルムで撮影されているものが結構あるようだ.最近放映されているドラマで言えば,Xファイルや刑事コロンボなどは,LX91で24p変換して観ると,非常によい解像感と動きが得られる.再生時にコーミングやぎこちない動きがみられないことから,24pの逆変換がうまく機能しているように思える.もっともこれらの再生時には,オリジナルソースが24pであることを示すLX91のアイコンは出ないので,LX91自体はおそらくこれらのソースを機械的に24p変換しているだけと思われる.プロジェクターのほうは24p信号を受けている表示になっている.

そして,これが驚きだったのだが,LDタイトルをBDにダビングして,LX91で再生すると,明らかな映像の改善がみられることだった.アナログ時代も,24pの映画フィルムを60iにテレシネする際には,24フレーム/秒を30フレーム/秒に変換する操作が必要であったはずだ.LDをBDダビングして観る場合,場面転換時に一瞬コーミングが出ることが結構多く,またひどくコーミングが連発する場合もある.ダビングしたソースについては,LX91はオリジナルが24pであるアイコンを表示しないので,それを24pとはみなしていないことになる.したがって,LX91が機械的に24p変換をしているせいだろうと考え,一時停止して1〜5フィールドコマ送りし,再生を再開すると,コーミングが消える場合があることに気付いた.つまり,24pに逆変換する場合,どのフレーム(またはフィールド)から変換を開始するかということが重要だろうと推察され,「頭出し」をしてやることでうまく24p変換が進むのだろうと想像している.ただ,これでも全く改善しない場合もあるし,どうしても場面転換時に時々コーミングが残る場合などもある.いろいろ調べてみると,LDタイトルを作る際PALやSECAMのソースを使っている場合もあるようで,こういった場合は全くうまくいかないらしい.またテレシネの仕方が現在の標準的な方法とは異なるのかもしれない.まだ試した回数が少ないので一般的な結論は述べられないけれども,中にはまるでLDがDVDに変わったと思えるほど改善されるタイトルがある.特にLD作成のためにリマスターしたタイトルは成績が良いようである.こういうことなので,古いLDタイトルを観るときには,まずBD-REを使ってBDにダビングしてから,ということを実践している.この場合,オリジナルがあるので,ダビングしたものは観終わってから次々と消去すればよいから,お金はかからない.

さらにこの話にはおまけがある.私の使っているBD/HDDレコーダーは,SONYのBDP-EX200で,これは録画時に画質調整ができる.先日,ソビエト映画の「魔女伝説ヴィー」というLDタイトルをBDダビングして観るとき,オリジナルの色合いが赤に偏っていたのでこれを調整し,さらにコントラストや明るさも調整して録画し,LX91で24p再生したところ,色バランスや解像感が改善された画面になった.このように,古いLDを自力で蘇らせる楽しみもあって,映画ライフがさらに拡大したと感じている.

以上のように,1080i放送録画タイトルに限らず,DVD,そしてLDまでを生まれ変わったように観ることができ,過去の資産をゴミにしないLX91の力を,本当に素晴らしいと感じている毎日である.このようなコンセプトを持った再生機が市場に現在見当たらないというのは,非常に残念で仕方がない.そして文字通りPioneerの開拓精神に敬意を表し,今後もこういった古いものを大切にできる技術を市場に送り出していってほしいものである.



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