新型コロナの報道が毎日のように流れている.そんな中,常日頃から気になっていることが一つある.ニュースや報道番組で流れる字幕に,「収束」と「終息」の二つの語が,あまり考えることなく使われているのではないかという懸念である.新型コロナウイルス感染症流行の「収束」と,新型コロナウイルス感染症流行の「終息」は同じ意味なのだろうか,それとも違う意味なのだろうかと言うことだ.
例えば安倍首相の記者会見では,首相は音声で「シュウソク」と言っている.これを番組で字幕にして流すときに,局や番組によって,「収束」が使われていたり,「終息」が使われていたりする.そこで広辞苑第五版で調べてみると,「収束」は「おさまりをつけること,おさまりがつくこと.例文:事態の収束をはかる.」と書かれており,「終息」は「事がおわっておさまること.」と書かれている.
よく似ていてわかりにくいが,次のような例を示せば,その違いが分かると思う.例えば,新型コロナウイルス感染症流行が,ワクチンや治療薬が完成し,完全に克服された時に出される「シュウソクセンゲン」に,どちらの文字をあてるかということだ.お分かりと思うが「終息宣言」が正解で,「収束宣言」とは書かない.
つまり,「収束」とは,あるねらった状態に収まることを意味しており,「終息」とは完全に終わったことを意味するということだ.
思うに,今,政府の方々を初めとしたコロナ対策に中心にいる方々が,とりあえずねらっているのは「収束」だと思われる.新規感染者数がある一定以下になり,PCR検査の陽性率がある一定以下になり,等々,この状況がある一定の範囲内に「収束」することをねらっているのだと思う.本当の「終息」は,立場のある医療関係者が言っているように,「ワクチンが開発されたときであり,それには相当の期間がかかるだろう」ということだと思う.
「収束」によって,とりあえずの医療体制を崩壊から守って維持し,経済活動をそれなりに再開し,新しい日常での生活を始められるようにする.そして,ワクチンや治療薬が開発されて,やがてやってくる「終息」の日を待つ,ということなのだと思う.
マスコミには,正しい意味で,言葉を使うことを期待したい.